月の下のレストラン|深夜に見たら終わる飯テロアニメ【本編&グルメ解説】
半年前、ポストに届いた金の招待券。

その日から、ずっとこの夜を待っていた。
都心から電車を乗り継ぎ、指定の場所へ向かう。

そこには、空を突き刺すようにそびえ立つ、
天へと続くエレベーターがあった。
それに乗れば、雲の上のレストランまで、ほんの数十秒。

扉が開く。
月の明かりに照らされた雲海が広がる。

壁と天井は透明なガラスで、
心臓が止まりそうなほど、綺麗な景色だ
ここは、月の真下にだけ現れるレストラン。

満月の夜、月明かりに映える料理だけを、
一流のシェフが静かに出してくれる。

……あぁ、腹が減った。
さぁ、飯を食おう。
まずは、とろけるモッツァレラチーズと甘いミニトマトのサラダ。
ナイフを入れた瞬間、濃いミルクがとろりとあふれ、はじけるトマトの果汁と混ざって、空っぽの胃にゆっくり火をつける。
カリッと噛んだ瞬間、オイルとチーズがじゅわっと染み出して、生ハムの塩気が一気に体中を目覚めさせる。
表面だけ香ばしく焼けたサーモンから脂がじんわり滲み、プチッと弾けるイクラが追い打ちをかける。
空腹が、ようやく静かに埋まっていく。
ここから、一気にスピードを上げる。
グツグツ煮えたオイルにフォークを入れるたび、にんにくの香りが立ち上り、プリッとした海老から熱い旨みがじゅわっと溢れる。
バゲットを浸せば、表面サクッ、中はオイルを抱きこんだスポンジみたいだ。
こんがり焼けた表面をスプーンで割ると、湯気と一緒にチーズが糸を引き、バターと焦げたチーズの香りが一気に鼻を殴る。
カリッと焼けた皮からバターがじわじわ滲み、ふわっとほどける身に、最後のレモンの酸味が月明かりみたいに差し込む。
鉄板でじゅうじゅう鳴くバター醤油の上で、ホタテがぷるぷる震えながら焼かれていく。
かじれば、甘い汁が舌の上で小さな波になる。
ソースをまとった麺を持ち上げると、とろりとウニが滴り落ち、海の香りと生クリームのコクが一気に押し寄せる。
雲の上でも、うまいものはちゃんと胃に落ちる。
それだけで、今日は十分だ。
フォークをねじるたび、もったりしたソースが絡みつき、カリカリのベーコンから脂がじゅっと溢れて、喉の奥まで滑り落ちていく。
ナイフを入れた瞬間、フチから肉汁が噴き出し、濃いソースと混ざり合って、噛むたびに口の奥で小さく爆発する。
フォークが止まらない。
気づけば、皿がどんどん空になっていく。
いつもは一人で食べるのが好きだけど、今日だけは、誰かとこの瞬間を分け合いたかったな。
表面はカリッと焦げて、中はしっとり。噛むたびにざくざくと歯を押し返してきて、炭と脂の香りがふわっと鼻に抜ける。
レモンを絞れば、きゅっとした酸味が締めてくれて、「もう一枚」を静かに誘ってくる。
ろとろデミソースと牛すじで濃厚な一口。
甘さと苦味とコクが混ざり合って、ゆっくりと胃の奥まで流れ込んでいく。
鉄板の上で米粒がパチパチ跳ね、にんにくと醤油の香りが店中を満たす。
口に運ぶと、カリッとしたおこげと、バターを吸い込んだ柔らかい米が一緒にほどけていく。
表面のほろ苦い焼き目の下から、スプーンですくうだけで崩れるチーズがとろりと現れ、舌の上で何も言わずに溶けていく。
外はカリッ、中はふわふわのワッフルの隙間に、冷たいバニラアイスがゆっくりと沈んでいく。
熱と冷たさ、甘さと香ばしさが何度も折り重なって、さっきまで騒いでいた胃袋の音が、いつの間にか静かになっている。
はぁ、うまかった。
腹も満たされ、月の光に照らされながら、心まで静かに満ちていく。
未来のことも、過去のことも、
今日だけは、何も考えなくていい。
今この瞬間を、ただひと言、
「うまかった」で埋め尽くそう。




